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甲種合格
2013/10/21(Mon)
10月21日。学徒出陣70周年というニュースを目にしました。

遠い昔です。


先週、主治医の往診がありました。

部屋を一つ一つお訪問しベッドに腰掛けている入居者に先生がしゃ

がんで話しかけながら診察するスタイルです。


その日の診察も順調にすすみ最後は92歳になる男性入居者の番です。

「コンコン。須藤さん(仮名)。先生の診察ですよ」と付き添って

いいる看護師さんが声をかけました。


須藤さんは介護度4。車椅子生活。認知症も進んみ私達との会話は

ほとんど成立しない方です。いつもニコニコ笑顔で一日を過ごして

いるやさしいおじちゃんです。


先生が聴診器をあて血圧をはかり、そして親しみを込めた口調で須藤さん

に体調をたずねました。

すると突然「甲種合格できなかったんだよ」

周りの人は何を言い出したんだろう、きょとんとしながら再度聞き

返しました。

「甲種合格できなくて親にすごく怒られたんだよ」と繰り返しました。

私たちの中でも甲種合格の意味がわからくて困っていると、しずかに

看護師さんが説明してくれました。


「戦時中の徴兵検査で身体が健康な人は甲種、視力がわるいなど戦地に

赴くにあたって少し問題があれば丙種合格だったんですよ。大変な時代

でした」と語りました。


「そうなんですか。大変でしたね須藤さん」と先生が話しかけると目から

涙がポロポロこぼれています。


一同顔を見合わせながら沈黙の時間が続きます。


「ずいぶん怒られたんだ・・・あのときは。くっやしかった・・・」とさら

に声を出して泣き始めました。


これ以上興奮させてはいけないと先生をはじめ周りの人がやさしい言葉かけ

をしながら落ち着かせ、そして私たちは静かに後ずさりするように部屋を出

ました。


無事、診察を終え場所を移した私たちは、何か重大な仕事を終えてホッとし

たような気分で「よほどくやしかったんだね」とか「家族から穀潰しみたに

いわれたのかな」とか「戦争は終わっていないね」などと会話しました。


70年前の出来事を昨日あったことのように思い出させ涙させる「戦争」と

いうものの威力を思い知らせる一瞬でした。

しかも周りで聞いていた私達をも、タイムスリップさせ70年前に連れていくと

すごいパワーを持っているのです。

広島の原爆資料館や靖国神社の遊就館などで戦争の時代にタイムスリップして涙

することはありますが、まさか日常の中で戦争に涙することがあるとは思っても

いませんでした。


「学徒出陣70周年」のニュースは須藤さんの涙が「見落とすんじゃないぞ、お

まえ」といっているようにも思えてきました。



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